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人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2007/07/07号

本の紹介 「参加型開発と国際協力」 
ロバート・チェンバース著 明石書店

by 野田直人

「参加型開発と国際協力」 ロバート・チェンバース著 明石書店

 前回に引き続きロバート・チェンバースの本です。

 この本の原題は「Whose Reality Counts?」です。

 ここでチェンバースが言うリアリティは「真実としての現実」ではなく、「解釈された現実」のことです。つまり、ひとりひとりがどう感じ、どう解釈しているか、という(認識されているかどうかは別にして)人それぞれの主観を含んだリアリティのことです。

 国際協力の世界では長年、先進国から来た専門家が「あなたたちはこうあるべきだ」「私たちの指導するようにこうしなさい」と言い続けて来ました。

 これらはすべて、先進国から援助に来る人たちのリアリティに基づいたものでした。しかしチェンバースはそこに疑問を投げかけ、「主役は誰なんだ?」「判断するのは誰なんだ?」と訴えかけます。

 それまでの権威をこき下ろすような表現も含まれ、力を持つものにその力を放棄することを求めているためか、賛否両論、ファンも敵も生み出した本です。

 私自身はチェンバースの人となりが良く現れた、国際協力関係者なら必ず読まなくてはいけない本だと考えています。

 経済理論や方法論に引きずられがちな開発協力従事者を、当たり前の人間の世界へと引き戻してくれる指針となる本です。

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