国際協力マガジン-情報受信者と情報発信者のニーズを繋ぐ
by 野田直人
「国際協力マガジン」というメルマガを、国際協力関係者ならご存知の方が多いと思います。国際協力関係のイベントやキャリア・ビルディングなどに関する情報を流すメルマガで、発刊は2000年1月。読者数はここ数年9千人台を維持しています。
実は私が創刊者、それ以来編集長を続けています。
最低週1回の発行で、投稿記事と有料広告を掲載しています。広告料は発行部数に応じて料金が決まる仕組みですが、ここしばらくは1広告7千円台です。
営利目的のメルマガではありませんので広告料はプールしておき、海外で災害があった場合などに寄付金として出しています。ちなみに現在までに寄付した総額は100万円以上になります。
「国際協力マガジン」が広く受け入れられたのは、顧客の囲い込みを図るのではなく、オープンなものにしたのが一番大きな理由です。
「国際協力マガジン」を発刊した当時、既に大手のNGOなどは独自にメルマガを発刊していました。その意味では「国際協力マガジン」は後発だったのですが、先発のメルマガの発行部数をすぐに追い越し、今では業界の中のスタンダードとして知られています。
創刊時は知人二人と私の3人の編集体制で、3人とも仕事で途上国を転々としていました。当時は今ほど途上国のネット状況がよくありませんでしたから、編集や発刊にもかなり苦労しました。
その後ボランティアを募り、現在では10人ほどの編集者がローテーションを組んで作業を行っています。ネットの特徴としてお互いに顔を知らない編集者が、自主的に作業の調整を行っており、編集長である私はほとんど口を出すこともありません。
ではなぜ「国際協力マガジン」を発行しようと思ったのか。ほとんどの国際協力関係のメルマガは、記事の内容がそれぞれの発行母体の団体関連情報に限られていたからです。
いわば、ネットショップが顧客の繋ぎとめのためにメルマガを発行するようなもの。それはそれで理にかなっているのですが、国際協力に関心を持つ多くの人のニーズに合致しているとは言えませんでした。
世の中には「ネットワークNGO」と呼ばれる、複数のNGOをメンバーに持つ組織も存在します。しかしそのような組織の流す情報は、会費を払っているメンバー組織の情報に限られ、さらには政府機関などの流す情報は掲載されないのが普通です。
一方国際協力に興味を持つ多くの人たちは、特定の団体に興味を持っているわけではありません。いろいろな見聞を持ち、いろいろなオプションを持ちたいと考えています。
また、小さな団体だと、自分たちの活動に精一杯で、せっかく良いことをしていても広報をするチャンネルがない、という事情がありました。独自のメルマガを編集・発行するにはかなり手間がかかります。またせっかく発行しても、無名の団体がまともな数の読者数を得ることは非常に困難だからです。
そこで国際協力というテーマで、編集部が定める投稿文の要件を満たしていれば、団体の規模や実績に係らず情報掲載ができるメルマガを発刊することにしました。つまり、情報を発信したい人、受けたい人が存在するにもかかわらず、受け皿がなかったのでそれを自分たちで作ったのです。
そうして発刊した「国際協力マガジン」は創刊号の読者数が1376人。とても評判がよく、NGOばかりでなく、国の機関や国際機関、大学などが広報に利用するようになりました。
読者数が増えれば、投稿したい人も増えます。創刊当初は私がコラムを書くなどもしていましたが、投稿文だけでも掲載枠に収まりきらない状況になってきたため、今では投稿文だけで誌面を構成しています。
つまり発行者がコンテンツを用意する必要は全くなくなったのです。
発刊当初は営利目的での記事投稿はお断りしていました。しかし発行部数が伸びるに従い、有料でも記事を掲載して欲しいというニーズが高まり、広告を受け付けることにしました。
国際協力という、非常に限られた分野に興味のある読者が9千人。しかも多くの読者はメルマガを楽しみにしていますから、広告への反応はとても良いそうで、広告利用者のほとんどが継続して利用されています。
「国際協力マガジン」の編集はボランティアによって担われており、広告収益もすべて寄付にあてるなど、ビジネスとしては運営されていません。
しかしメルマガのテーマを絞った点。その一方で情報の投稿はオープンにした点などは、ビジネスでの応用にも参考になると思います。