人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2008/01/18号

成功する社会起業家の行動特性とは?

~Room to Read 創設者 ジョン・ウッドの場合
by 野田さえ子

今、社会起業家と呼ばれる人たちが増え、税金ではなく、別の資金源で事業をおこしながら、社会の問題を解決して数多くの実績を残し始めています。彼らはどのような工夫をし、資金提供者の支持を得ているのでしょうか。成功している社会起業家のコンピテンシー(思考・行動特性)とは、いったい何なのでしょうか?

このテーマに興味をもったきっかけは、社会起業家とは話は離れますが、今から7-8年前、国際協力事業団(当時)より派遣された農村開発専門家の帰国報告会に参加したことから始まります。

あるアジアの国の貧困削減のための農村開発プロジェクトの報告会でした。聴衆から「貧困削減という目標達成に対し、ここの視点が抜けていたのでは?」といった指摘が出ました。これに対して、「いや、それでも派遣専門家一同、一生懸命頑張ったのです。」という悲壮な訴えが専門家からされたのをみて、驚きを隠せませんでした。

「組織内部の人間関係の和の大切さ」や「努力志向」といった価値観に理解を示すことはできます。しかし、もう一つの軸である「対外的な説明責任」や「結果重視・コストパフォーマンスの重要性」といった視点がすっぽり抜けているような気がして、なんだかバランスにかけると思われました。

この2つの、基軸となる価値観のバランスをとりながら成功している社会起業家のコンピテンシーを知ることこそ、日本の国際協力業界にとって多くを学べる機会のような気がしてなりません。

たとえば、途上国へ図書館や学校などの教育インフラを届けるNPO「ルーム・トゥー・リード(Room to Read)」を設立した社会起業家のジョン・ウッド氏の場合はどうだったでしょうか?

彼は、ケロッグ経営大学院でMBAを取得後、数年の銀行勤務を経て、1991年にマイクロソフト社に入社。30代後半で国際部門の要職につきました。中国・アジア地域の事業開発担当重役を務めたのち、1999年末に人生を大転換。社会起業家に転身しました。

詳しくは、「マイクロソフトでは出会えなかった天職 ~僕はこうして社会起業家になった」という著書に載っていますが、彼の行動には以下のような特性がありました。

1.議論ではなくまず行動したこと。
「世界を変える手助けをするために、自分の人生を少し変えてみようと思っているなら、僕の心からのアドバイスをひとつ――考えることに時間をかけすぎず、飛び込んでみること。」

2.具体的な数字に基づいて思考し結果を出す、というマイクロソフトの徹底した成果主義の組織文化を導入したこと。
「ルーム・トゥー・リードとほかの数あるNPOとを差別化する方法として、僕はこう考えた。やろうと思っていることを話すのではなく、やってきたことを話そう。結果を出せ、結果を出せ、結果を出せと寝言でいうマイクロソフトのナンバー2、スティーブ・バルマーに報告するつもりになれ。」

3.数多くの、「個人」の賛同を得られやすいビジネスモデルを築いたこと。
「慈善」ではない「人への投資」というビジネスモデルで、多数の人が多様な形態で出資する。大金持ちがする慈善活動ではなく、人生にもっと意味を持たせたいと思っている多少の余裕資金のある多くの人たちが、ちょっとした時間を割いてできることを、ネットワークを作り、先進国と途上国の村の個々人による共同出資というかたちで実現。「マイケル・ポーターは、旅行業界の歴史を通じて、レンタカーを洗車した人はだれもいないと言いました。所有している意識がなければ長期的なメンテナンスはしないのです」。

4.出資者(寄付者)に対し、自分たちのビジネスモデルを売り込むための工夫をしたこと。
・売り込み先(ターゲット)の明確化。
教育が自分の人生に役に立ったという経験をしており、人生にもっと意味をもたせたいと思っている多少の余裕資金のある寄付者をターゲットとし、ターゲットがいそうな都市(ニューヨーク、ボストン、ワシントンDC、サンフランシスコ、バンクバー、ロンドン、東京)でチャプターと呼ばれるファンド・レイジングの会を開催。
・「私の」寄付とその成果のわかりやすい関係を示した。
「8千ドルなら学校1つ、1万ドルなら図書室のある学校1つ」といった具体的な目標は説得力をもつ。
・情熱を売り、教育によって恩返しをしたいと思う個人の共感を呼んだこと。
そして、「お金をください」と恐れずに言えるスタッフがいる。
・お金の行先を「正確に」わかりやすい形で必ず出資者に報告したこと。
たとえばジョン・ウッド氏がひらめいた工夫の1つ。
送信するすべてのメールに、名前や所属と合わせて、ルーム・トゥー・リードの成果を記すこと。
「<現在までの成果>学校200校、二ヶ国語の図書館2500か所以上、本の寄贈120万冊、少女への長期奨学金1800人以上。私たちと一緒に教育を広めましょう」という具合に。

5.組織運営を工夫したこと
・財団などの組織からの出資をNPOの間接費にあて、個人からの寄付は現地での学校建設や図書館創設など目に見える事業にあてること。
・運営コストを極力抑え、寄付金の90%以上を実際のプロジェクトに使うこと。
・人材マネジメントをうまくこなすこと。
「マイクロソフトで学んだことのひとつは、いい人材を見つけたらカネを出して雇うこと。」 「とくに初期の採用は肝心だ。その組織文化を伝える役割を担う人物となるから。情熱があって、自分の数字を知っている人間だけ雇うこと」

とても参考となりますが、私にとって耳の痛い話も多く含まれています。

途上国の教育の専門家からは、「建てた小学校の数は、教育という分野における指標にはならない」とか、「定量的な数値目標には限界がある。最終被益者の定性的な部分を見ていかないと」など批判が出るかもしれません。

しかし、彼は著書にこう書いています。

「それはできないと言う人は、それをしている人を批判するべきではない」
  中国の格言より。

「私」が今からできる「行動」へとつなげたいと思います。

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