人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2010/06/15号

コラム「大きな目標の方が達成は簡単?」

by 野田直人

最近書評を見て購入した本に「20歳の時に知っておきたかったこと スタンフォー ド大学集中講義」があります。
http://hitonomori.com/books/4484101017.html

この本は、発想の転換や殻を打ち破ることを促す内容なのですが、20歳を超えて しまった人にとっても非常に面白い一節が。

「小さな目標を決めるよりも、大きな目標を掲げる方が楽なことが多い」。

どういうことかと言うと、

「小さな目標の場合、達成する方法は限られている。」 「大きな目標であれば、時間や労力を使えるし、達成する方法も多い。」

人の森通信でこの点を取り上げたのは、目標の考え方が、国際協力プロジェクト などで使われているものと、まったく異なっているからです。

国際協力プロジェクトでは、まさに「方法を限って小さな目標を達成する」こと に重きが置かれます。それはつまり、時間や予算があらかじめ決められているこ ともありますし、「計画通りやっている」ことを示すことが説明責任を果たすこ とに繋がる、と考えられていることもあります。

ところが、この本が指摘するのは、「方法を限って小さな目標を達成する」こと の方が、本当は難しい、という点です。

確かにそうです。多くのプロジェクトは小さく始めて、小さな目標が達成できた ら、それを広げて行こうと考えます。ところが往々にして小さな目標達成で壁に ぶつかります。計画に縛られて目標に到達する手段を変えることも容易ではあり ません。

また仮に小さく成功しても、それを大きく適用しようとしてもうまく行きません。

逆を行っているのがバングラデシュのグラミン銀行で、「バングラデシュから貧 困をなくす」という大きな目標を掲げて次々に手を打つことで、グラミン銀行以 前から存在している開発NGOなどよりもずっと大きなインパクトを既に出して います。

国際協力プロジェクトでは最終的に到達したい目標を「上位目標」とし、自分た ちの責任で到達するところを「案件目標」「プロジェクト目標」などとしていま す。

でも考えてみればわかりますが、本来の目標は「上位目標」しか存在せず、案件 目標は手段を一つ書き記したにしか過ぎません。

貧困撲滅への道筋はいくつもありますが、例えば換金作物の普及というのは、手 段の例でしかなく、換金作物をやらずに貧困撲滅に到達してもかまわないはずで す。

結局、「自分たちの手に負える範囲にしよう」と目標を小さくとることが、手段 を制限し、柔軟に上位目標へ向かっていくことを難しくしているのではないでしょ うか。

ソニーが大きく飛躍するきっかけになった商品は、ポケットサイズのトランジス タ・ラジオだったそうです。

ラジオがまだ「置物」だった頃、当時の社長は開発陣に「ポケットに入るラジオ を作れ」と指示したそうです。道のりは?誰にもわからなかったそうです。

この時もし社長が「今より一回り小さいラジオを作れ」なんて言っていたら、今 のソニーはなかったことでしょう。

ムハマド・ユヌス氏が「バングラデシュの貧困」ではなく「まず対象の3ヵ村か ら貧困をなくそう」と言っていたら、今のグラミン銀行はなかったことでしょう。

まず「目標とは何か」「目標を立てる意味は何か」を考え直す必要がありそうで す。

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