人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2012/02/01号

コラム「世界市場を目指そう」

by 野田直人

昨年、無印良品はJICAが途上国で展開する一村一品支援によって作られた商品を クリスマス向けに2種類採用して話題になりました。その一つは、私が4年半滞 在したケニアの動物をかたどった工芸品で、私にはとてもなじみのあるものでした。

無印良品が採用した、ということは大きな一歩ではありますが、このケースに限らず、常々疑問に思っていることがあります。

ケニアの工芸品はソープストーンという、ピンクがかった柔らかい石の彫り物で、 数十年前からケニアへサファリに訪れる観光客向けに多く作られ、売られている ものでした。

ケニアへ行かれた方ならわかりますが、首都のナイロビにはヨーロッパ各国から 大手航空会社のの直行便が乗り入れており、観光客の数の上では、日本人よりも 圧倒的に欧米人の方が多数を占めています。ケニアから何かを輸出する上でも、 航空貨物でも船便でも、日本よりはヨーロッパの方が近いですし、近年消費が盛 んになっている中国やインドをはじめとする各国も、日本よりもずっとケニアに 近い位置にあります。

実は、ケニアのソープストーンに限った事ではありませんが、日本の援助関係者 が商品開発や販売ルート開拓にかかわると、ほとんどのケースで「日本へ売る」 ことを第一に考えますし、多くの場合「日本へ売る」ことしか考えません。

その一方、先日テレビ番組の「カンブリア宮殿」に登場していた、海外で活躍す る二人の日本人、お一人は中国で家具を作って販売しており、もうお一人はアメ リカで鉄くずを集めて、各国に売っているのですが、その売り先は日本ではあり ませんでした。

特に鉄くずを扱われている方の輸出先の一つはベトナムの小規模な鉄製品業者で す。それまでよりも安価に販売される鉄くずは、ベトナム国内で使われる農具の 原材料となっているそうですから、国際協力関係者としても見逃せない話です。

このお二人の共通点は元商社マンであること。つまり、商社マンとして元々各国 をマーケットとして見る習慣が身に付いている、ということだと思います。

翻って国際協力関係者。「国際」と言いつつも、その意味は「日本と」どこかの 発展途上国との協力、という意味で使われることがほとんどであり、第三国、つ まり協力先の国や日本以外をマーケットと考える、という習慣ができていないよ うです。

国際協力関係者が日本をマーケットとして選択する理由は「自分になじみがある から」というのが、多分唯一の理由だろうと思います。商品そのものの特徴や、 援助対象国の地理的条件、貿易の主要相手がどこか、といった条件は、売り先を 考える時にほとんど顧みられることがありません。

これは、日本の国際協力関係者だけでマーケティングを考えることの限界を如実 に示していると思います。

では例外はないのか?少数ですが、あるようです。

例えば、人の森通信2011/11/25号のブックレビューで紹介した「BOPビジネス入 門」 http://hitonomori.com/books/4502688401.html に掲載されているJICAがエチオピアで実施するベレテ・ゲラ参加型森林管理プロ ジェクトが例外です。

前にも書きましたが、このプロジェクトでは、森林管理とコーヒーの認証を、ニ ューヨークに本部のある国際的な民間認証機関である「レインフォレスト・アラ イアンス」で受けています。

ベレテ・ゲラという地名をコーヒーのブランドとし、日本でも現在購入すること ができますが、日本に輸入されるきっかけになったのも、「レインフォレスト・ アライアンス」のホームページで紹介されたことによるそうです。

この場合のポイントは、国際的な認証機関の利用だと思います。プロジェクトの 日本人スタッフが直接売り込みを考えたりすると、思いつくのは…推して知るべ し、でしょう。いきなり欧米各国のコーヒーを扱う業者に売り込みをかけられる とは思えません。

国際協力関係者自身がいきなり商社マンのように世界を市場として意識し、アク セスする、ということはあまり現実的とは思えません。まずしなければならない のは、自分たちが抱える限界を認識し、不足している部分を補える誰かを見つけ ることではないでしょうか。

自分たちだけで解決しようとしない、というのも重要なことです。

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