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人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2008/04/13号

マラウイ訪問記 その3

by 野田直人

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今回はマラウイのプロジェクトの対象地の土地について書いてみましょう。最近は環境保全や農林業に関する国際協力プロジェクトでも、社会的な要素に目を向けることが多いのですが、問題解決には昔ながらの技術が欠かせません。

さて、このあたりの土地は土壌は比較的柔らかく、ケニアやタンザニアの乾燥地のカチカチの土を見てきた目には、かなり肥沃であるように見えます。それでもこの地でも旱魃の被害を受ける年もあるのですが。

この地域は緩く傾斜しており、ダムのある川へと向かって斜面が続いています。そこにいくつかの川の支流が入り、その間を人々が耕して暮らしているわけです。

緩い斜面であるにもかかわらず、農地において、土壌保全の対策はほとんどとられていません。ケニアなどだとかなり普及しているテラス(段々畑)も全く見られませんし、畝立ての向きも、傾斜を意識したものになっていません。

このため、大雨が降ると畑の土が流れ出してしまいます。

マラウイ政府の要請によると「森林植生の回復で土壌流出を止める」という想定がされているようなのですが、既に畑になっているところを森林に戻すことはできません。

もちろん、丈の低い木を農地に列状に植え込むことによってある程度の保全には役立ちますが、それだけでは限度があります。既に水の侵食によって斜面に大きな溝(ガリーと呼びます)ができている場所もありますから、ある程度の土木的な対策をとることは不可欠だと思われます。

実は日本は、もう10年余り前から断続的にこの地域にかかわってきたのですが、焦点は常に森林回復にあてられ、土木的な農地保全の必要性は強調されてきませ
んでした。

これは多分、マラウイ側の担当機関が森林局であったためではないか、と睨んでいます。森林局には農地そのものの保全を担当する機能はありませんから、単純に「斜面の侵食防止=植林」という発想で来ていたのでしょう。

縦割り行政の弊害というのは、何も日本に限られたものではなく、官僚組織が発達しているところにはどこにでも存在すると言えます。

でも、そんなことは言っていられません。今回のプロジェクトでは、プロジェクトの現場担当者には林業普及員だけでなく農業普及員も含め、さらに土壌保全の技術に関しては土壌保全局のようなところともコンタクトをとっています。

では、土木的な土壌保全の必要性は今になるまでわからなかったのでしょうか?多分そんなことはないはずです。過去にこの地に入った人たちの中には気がついていた人も間違いなくいたことでしょう。

問題は、分野を超えた提言をして、分野を超えた対策を組めるようなマネージメントができる機能が、かつてはマラウイ・日本双方に欠けていたせいではないかと思います。

以前はこのような案件の審査や実施は、JICA本部の林業担当部が行っていました。現在はマラウイ事務所が行う仕組みに変わっています。つまり、分野横断的な視野でものごとを見る体制が整ってきている、ということです。

20年前にケニアのプロジェクトで「果樹栽培を住民に教えたい」と提案したところ、「果樹は(日本の分類では)林業ではないからダメ!」と言われた時代とは隔世の感があります。

今回のプロジェクトでの私の担当分野は、参加型開発やどちらかと言うと経済面での村落振興ですが、元々は農学部出身です。現地に合った土地保全技術の導入の提言もしていこうと思っています。

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