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人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2010/02/18号

研修が必要なのは外国人?

by 野田さえ子

人の森では、外国人を雇用する日本企業向けの研修やコンサルティングを行って いる海外人財ネットという事業を運営しています。

すると、国際協力の業界と似ていると思うことがしばしばあります。

一つの類似点は、「外国人スタッフに学んでほしい」という意識のほうが、「私 たち日本人スタッフこそ学ばなければ」という意識より強いということです。 (いや、私は違うという方が多ければそれが一番です。)

企業向けの研修においても、離職率の上昇や、顧客対応の向上といった課題解決 のために、外国人スタッフ以外にも日本人スタッフの研修、あるいは経営者のキ ャパシティ・ビルディングも同時に必要な場合が多いのですが、発注元に、その 必要性を提示しても、いや、外国人スタッフの研修をやりたい、というところに 落ち着くことが多いのです。

しかし、いくら外国人に日本的な仕事の進め方や価値観を教えたとしても、日本 側の理解・歩み寄りがなければ、ともにwin-winで生産的な関係を築くことはで きないことが実践として多くみられます。

国際協力業界においても、同じことが言えます。

この業界では、「外国人スタッフ」ではなく、途上国のカウンターパートあるい はローカル・スタッフという言葉が該当するかと思いますが、彼らのキャパシティ ビルディングや研修の必要性が認識されているほどには、日本人向けの研修につ いての必要性を認識していないのではと思うことがしばしばです。(認識はして いたとしても、その研修効果を上げるためのコンテンツやデリバリー方法、委託 方法や評価方法についての工夫することについては、カウンターパート向けの研 修の態度とは異なることが多いです。日本人職員に対して研修を受講後、アクショ ン・プランを立てさせて、その後それをやったかどうかモニタリングをやってい る機関があったら、ぜひ教えていただきたいです。) (何度もいいますが、いや、私は違うという方が多ければそれが一番です。)

正確に言い換えると、「外国人」対「日本人」ではなく、意識・潜在意識上、あ るいは社会的立場や権力構造の上で「上位」にいる人が「下位」にいる人たちに 対する研修のニーズは認識しますが、「上位」にいる人たち自身が「下位」にい る人たちからの学ぼうとするのニーズは少ないということです。 (いや、私は違うという方が多ければそれが一番です)

では、両者の間に立つコンサルタントとしてどうするかというと、日本人あるい は立場上「上位」にいる方々のプライドを保ちながら、「ヒヤリング」と称して 日本人あるいは立場上「上位」にいる方々対象の研修項目を埋め込むか、あるい は、「会議」と称して相互理解のためのワークショップを開くわけです。

国際協力業界のとあるNGO向けのローカル・スタッフ向けの研修においても、 この同じアプローチ(上位者のプライド保持作戦)を試みました。実際には、ロー カル・スタッフ向けの研修に日本人にオブザーバーと称して参加してもらい、実 質的な相互ワークショップをメニューに埋め込みました。

最終的には、日本人スタッフの責任者から、「今ある問題はローカル・スタッフ の能力不足が原因だったという認識だったが、実際は、そうではなくて、私たち 本部(日本側)の組織体制や運営方法にあることがこのローカルスタッフ向けの 研修を通して、よくわかりました。」という感想をいただきました。

私も学ばなければいけないのですが、本当に「学ぶべきは誰なのか?」、常々考 えさせられます。

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