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人の森通信2014/01/28号

本の紹介「月3万円ビジネス」 藤村靖之著

by 野田直人

「月3万円ビジネス」という本は、世の中のビジネス本とは違い、月に3万円しか稼げない仕事をしよう!というコンセプトの本です。通常のビジネス本は、もっと大きな利益を出すことを念頭に書かれていますから、「これは本当にビジネス本かい?」と思われる方もいるかもしれません。

この本は、ビジネスのノウハウというよりはライフスタイルについて書かれている本ですが、ここではライフスタイルはさておき、ビジネスとしての「月3万円」の方にフォーカスを当ててみたいと思います。

「月3万円では小遣いにしかならないのでは?」という疑問はもっとも。この本で勧めているのは「複業」です。「副業」ならば小遣い稼ぎが目的になるかもしれませんが、「複業」は月3万円でも10個集まったら30万円になる、という発想に基づいています。

私はよく、国際協力分野で地域おこしに関する講師をする時に、参加者に聞くことにしています。「ここに1万円があります。皆さんにお預けします。これを1年間で1億円にする自信がある人はいますか?」

数十回はこの質問をしたと思いますが、現在まで「できると思う」と答えたのはただ一人、某超大手の電機会社に勤めている人一人でした。さすがに大企業に勤めている人は、考えている商品のスケールも違うのでしょう。

でもそれ以外、国際協力に関わっている人や、興味を持っている人の答えは「できない」でした。ところが、「では、1万円を2万円にすることはできますか?」と聞くと、全ての人が「できると思う」と答えました。

さて、この人たちは一体どのような手段でお金を稼ごうとしたのでしょうか。それはもちろん人それぞれかと思いますが、このくらいの金額であれば、ビジネスの経験がなく、縁が遠い人であっても、何らかのアイデアを出すことができる、ということを示しています。つまり、少額の利益であれば、ほとんど誰でも自分の知識や経験の中でアイデアを出すことができる、ということです。

これ、実を言うと発展途上国の貧困層相手のマイクロ・ファイナンスの発想と共通です。つまり、僅かな金額であれば、ほとんどの人が利益を出すアイデアを持っている。ニワトリを飼って卵を売る、町で石鹸を仕入れて村で売る、道端の茶店を開く…アイデアは人それぞれ。無数にあります。

仮に、喫茶店を開いて月3万円の利益を目指すとしましょう。お客さん一人あたりからの平均利益を150円とすると、200人のお客さんが必要です。月25日営業する場合、1日あたりだと、平均8人のお客さんがあれば良いことになります。

この規模なら、スターバックスが近所にできても怖くなさそうですねえ。逆に「ケーキセット1日限定10セットのみ、売り切れたら閉店」なんてやる方が差別化できて客受けしそうです。スターバックスに対抗するためにドトールのフランチャイズをやろう、なんて考えたら、動くお金は大きいでしょうけど、初期投資が嵩む上に高リスクで、普通の人では手が出せません。

月3万円の喫茶店ならば、競争をあまり意識しなくて済むわけですし、近所のスターバックスだって、決して「勝負して潰してやろう」とは思わないことでしょう。

「月3万円ビジネス」の本は、田舎暮らしを勧めていて、物価が安いところで地域循環型ビジネスを狙うわけですが、さすがにそれは多くの人にとっては非現実的。でも、月3万円ビジネスで複業化する、というやり方は、現在パートの人や、何らかの理由で退職した人には一考の余地あり、だと思います。

では、人の森という一企業にとって月3万円のビジネスとは何か。さすがに社員の人たちもいますから「3万円でも10個やれば30万円になる!」くらいでは、みんなが食べて行くことはできません。

でも、社員や地域の人たちが持っている能力とか、やる気を、金額的にはたとえわずかであっても、市場にどのように繋げるか、ということを考え、実行して行くことによって、日本の地域おこしであるか途上国での村おこしであるかに限らず、良いヒントと経験が得られているように思います。

本の紹介「月3万円ビジネス」 藤村靖之著
https://honwoyomu.com/books/4794967616.html

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