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人の森国際協力>>アーカイブス人の森通信2011/10/11号

本の紹介「西アフリカの教育を変えた日本発の技術協力」

by野田さえ子 国際協力コンサルタント、中小企業診断士

書籍:原雅裕著,「西アフリカの教育を変えた日本発の技術協力」
ニジェールで花開いた「みんなの学校プロジェクト」の歩み (ダイヤモンド社 )

このプロジェクトの評判について、かねがねコンサルタントや JICA関係者の方々 から聞いていました。ぜひ詳しく知りたいと思っていたら、 2011年4月に出版さ れました!

「みんなの学校プロジェクト」。

最貧国にあたるニジェールで、真に機能する学校運営委員会を設立・改善してい くプロジェクト。その住民参加型プロセスの過程を通し、より多くのこどもたち が学校に通え、よりよい環境で教育を受ける機会を得るという成果を残した「伝 説」のプロジェクトの一つです。

最初は、ある1つの学校施設の建築という無償資金協力プロジェクトのソフト支 援という、小さなパイロットプロジェクト的な試みから始まりました。

これまでの経験とそこから得た知見を「ミニマムパッケージ」化し、それをニジ ェールのタウア州の学校2800校以上に導入。その後、このモデルを、ニジェール 全土に導入される全国スタンダードとして教育省のお墨付きを獲得しました。ま た、このモデルを全国1万校程度に導入するための「モデル普及資金」として、 世界銀行による資金を得て、発展しています。
さらに、このモデル、セネガル、マリ、ブルキナファソにも広がっているとか。

このスピード感。
このスケールアップ力。
そして、成果を出そうとする意気込み。
そしてそれらの集大成としての成果。

教育分野を専門とする人でなくとも、開発援助関係者全般におすすめの書籍で す。特に、マネージメントに共通するテーマで、非常に大きな学びを得られます。

著者の原さんは、単なる枠組みの中で実行していく、プロジェクトの「管理」を 行う人ではなく、ビジョンを持ち、未来を創造し、フレームワークを生み出し、人 ・モノ・カネ・情報を大きな目標にそって有機的に活用し、成果を出された方で す。

社会的、政治的、経済的な要因をすべて勘案し、次々と手を打ち、成果へ とつなげています。

例えば、原さんは、タウア州のプロジェクトの成果を教育大臣へアピールする機 会を作りだします。そのために、周到に人に働きかけ、また説得力のあるプレゼ ンを用意し、全国展開への足掛かりを作った様子などは、非常に勉強になります。 チャンスを創り出し、その限られたチャンスをものにするために、人財や資金を 動かす真のリーダーであり、優れた経営者と近い資質をお持ちの方だなと感じま した。

また、貧困削減など途上国の問題を解決するための成果を上げたい人にとっても、 著者の原さんがとられたキャリアの道も参考となるはず。

例えば、原さんは、広告代理店勤務、国連代表部、日本大使館、はたまたフラン ス料理店の経営者などさまざまなな経験を経てから、おそらく40代以降で(広域) 企画調査員になられています。

案件形成は、最初の大きなフレームを創る要の作業です。その職務はかなりの重 責を負っていると考えます。というのは、後の段階で参画する専門家・コンサル タントでは、決められた枠組み内での修正はできるものの、大きな枠組そのもの を修正しにくくなるからです。

よって、この案件形成の任務を担う人は、専門家への登竜門として参画する層で はなく、原さんのようにかなり経験・知見・人脈を構築し、広いパースペクティ ブで問題をとらえ、解決のための想像力と実践力を備えた層が行うべき職務では ないかと思います。

無論、その人の成果・能力は年齢や経験だけで決まるものではありませんが、少 なくとも、実施段階に参画する専門家よりも高度なポスト・待遇に位置づけ られるべきなのでは、と考えます。

いずれにせよ、ご一読をおすすめします。

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