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人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2008/06/19号

まずは親しくなろう

by 野田直人

先日NHKで「ご近所パーティー」というような催しが世界的に広がっていることを、特集で取り上げていました。

これは都市化や人の流動化で、コミュニティ意識が薄れ、いざという時に、近所同士の助け合いができなくなってきている状況を憂いてフランスから始まった運動だそうです。

フランスのあるアパートで、お年寄りの孤独死が相次ぎ、それに危機感を抱いた若者が運動を立ち上げたのが、世界中に広がりつつあるとか。

近所に気にかけてくれる人がいない、また、何かあった時に声をかける相手もいない状況を、パーティーを通して知り合うことで打破しようという試みです。

私の住むマンション。できてから3年目くらいですから、すべてが新しい住民。もちろん住民間のコミュニケーションは希薄です。

するとどのようなことが起きるか。

例えば駐車場の使い方などでルール違反者があった場合、それをののしるようなきつい言葉を使った張り紙が出されたことがありました。顔の見えない相手に対する苛立ちもあるのでしょう。

でも、お互いに知り合いであれば、そんな言い方ができるでしょうか。

孤独死やルール違反は「何かあった場合」のことですが、それだけではありません。「何かをしなければならない場合」も同様です。

例えば息子が通う幼稚園。以前は入園してすぐに、保護者会の役員を決めなければなりませんでした。これでは保護者同士がお互いにまだ知らない関係で、特に第一子であれば不安を抱えた状態で、プレッシャーを掛け合う、という事態が生じてしまいます。

保護者会のような組織には年間のスケジュールがあります。できるだけ早く役員を決めて動き出したい、というのも理解はできますが、やり方を間違えたら、長く残るしこりを残してしまいかねません。

これは国際協力の現場でも同じ。

日本人は派遣されるとすぐに、物事を動かして行こう、という傾向が強く見られます。「仕事をしなくてはいけない」という強い観念を抱いているからでしょうか。

でも、現地の相棒(カウンターパートと呼ばれます)やスタッフとの人間関係のこじれ、そして協力の対象となる地域住民の誤解を生んでしまうケースも多々あります。

一度ねじれた関係を修復するのは、やはり非常に大変なこと。後々まで尾を引くことになります。

まずは自分を知ってもらい、相手を知るためにたっぷりと時間をとりましょう。最初に親しくなり、信頼関係ができれば、入ってくる情報量がまったく違うことに気づくでしょう。

そして信頼関係ができていれば、トラブルが起きた場合でも、お互いがすぐ関係修復を目指して動き始めることに気づくはずです。

任期が決められ、既に計画が作られている国際協力の現場では、すぐに作業に取り掛からないとスケジュールどおりに物事を進められないように思いがちです。

しかし、急がば回れ。最初にお互いを知る時間をじっくりとれば、後がスムースになり、結局このほうが物事は順調に進むようになります。

任期が2年なら、最初の1ヶ月や2ヶ月、そのようなゆっくりした時間をとっても、終わる頃には十分元がとれていることでしょう。

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