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人の森国際協力>>アーカイブス人の森通信2011/11/25号

本の紹介 「BOPビジネス入門」

by 野田直人

この記事は「国際協力メーリングリスト」に投稿した文に手を入れたものです。 あらかじめご了承ください。

当社ではマーケティング講座を実施していますが、今読んでいる

「BOPビジネス入門」 

という本に、JICAがエチオピアで実施するベレテ・ゲラ参加型森林管理プロジェ クトの紹介がありました。

以前から小耳にはさんではいたのですが、このプロジェクトの詳細は知らずにい ました。

このプロジェクトは、題材として、モデルとして、とても面白いプロジェクトで す。滅多にプロジェクトとか褒めない僕が感心しました。アフリカ各地で行われ ている一村一品プロジェクトで見習ってほしいくらい。

よく講師をしていて多くのプロジェクトの問題点を解説していると、「成功例は ないんですか?」と突っ込まれて困ることが多かったのですが、このプロジェク トの取り組みからは学ぶポイントが多いように感じます。

このプロジェクト、簡単に言えば、エチオピアのある地方で森林保全と住民の生 活向上のために、コーヒー豆を生産して販売する、というものですが、いくつか の特徴があります。

第一に、バリューチェーン、つまり生産者から消費者に至るまでの産品の流れ、 供給ルートですが、当初から商社や民間企業を巻き込み、採算ベースでやること を狙っています。逆に援助団体がバリューチェーンに入ってしまうと、自立が困 難になる場合が多いです。

第二に、プロジェクト独自の認証とか、エチオピア国内の認証とかではなく、国 際的に知名度が高い、ニューヨークの「レインフォレスト・アライアンス」の厳 しい認証を取得しています。製品のクオリティの保証としても、また、広告とし ても非常に有効な認証です。

第三に、少人数で構成されるグループ一つ二つではなく、地域産業としてのスペ シャリティ・コーヒーの生産に取り組んでいるようです。商社や大手のコーヒー 会社と取引するためには、相当量の確保が必要ですからねえ。忘れられがちです が必須です。

第四に、これはプロジェクトと言うより、コーヒー会社の戦略かもしれませんが、 ベレテ・ゲラという地名をコーヒーのブランドに使っています。つまり、地域の 人が誇りを持つことができる、地域ブランドの創出です。

第五に森林管理の単位として、現地社会にあるワブブと呼ばれる既存の単位を使 っています。住民の組織化をコーヒー生産用に新たに始めようとするとかかる、 余分な取引費用(トランザクション・コスト)を省略していると考えられます。

本格的にコーヒーのトレードのかかわっている人なら「それがどうした?」かも 知れませんが、国際協力の枠組みでここまできっちりとやっている例は、まだま だ少数だと思います。

JICAも一村一品とか考えるなら、このプロジェクトにもっとフォーカスして、もっ と宣伝(プロジェクトもコーヒーも)してもいいんじゃないかなあ。

ベレテ・ゲラのコーヒーはここで紹介されています。
http://www.coffee-network.jp/products/detail.php?product_id=55
購入はこちらが便利。楽天市場です。
http://ow.ly/7EDaq

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