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人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2009/07/01号

本の紹介「そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生」

by 野田直人

「そうだ、葉っぱを売ろう!過疎の町、どん底からの再生」 横石知二著

グラミン銀行が世界を代表するソーシャルビジネスならば、葉っぱビジネスで有名になった徳島県上勝町の「いろどり」は日本を代表するソーシャルビジネスと言えるでしょう。

この本は、いろどりを引っ張ってきた横石さんの自伝的な本。この本と比肩するのは、やはりグラミン銀行の生い立ちが描かれた「ムハマド・ユヌス自伝」でしょうか。葉っぱビジネスを思いついた経緯から、株式会社いろどりの成り立ちまでが紹介されています。

国際協力や地域開発で活かせるヒントはてんこ盛り。重要な点は著者の横石さん自身が最後にまとめています。でも、いろどりの歴史の記述の中にも、良いヒントはたくさんあります。

これまた「ムハマド・ユヌス自伝」と共通なのですが、どうも、こうしたカリスマ起業家たちは、自分たちの工夫や知恵を当然のことのように、さらっと書き流してしまうところがあるようです。開発学の教科書ではなく、自伝なのですから当然と言えば当然かもしれませんが。

知恵や工夫を開発協力のコンテクストの中で一般化して伝える、というのは当社、人の森に与えられた課題、と勝手に解釈しています。

本書も、「ムハマド・ユヌス自伝」も、山村の高齢者とかバングラデシュの貧困女性とか、いわゆる社会的弱者のエンパワーメントが主要なテーマとして取り上げられています。

エンパワーメントを実現するための手段としてマイクロ・クレジットとか、葉っぱビジネスとかが使われているわけですが、開発協力関係者が弱いのは、まさにこうした「お金の動き」です。

結果としてのエンパワーメントに注意をとられてしまい、ビジネス上、ファイナンシャル上での「仕掛け」を見落とす傾向がどうしてもあります。

開発協力関係者にとっては、ファイナンシャル・リテラシー、ビジネス・リテラシーが弱点です。開発協力関係者の大部分が、給与生活者であることが原因ではないかと、考えています。給与生活者の場合、個人の投資や工夫、リスクを取ることによる成果の向上が、直接自分の利益のアップにはつながりませんから。

日本であれ、発展途上国であれ、社会的・心理的な側面と、経済的な側面とは、手と手を取り合っているものであって、本来切り離して考えることはできません。 持続性・発展性を持って続いている事例をみると、その両方が同時に工夫されているように思えます。

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