人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2017/10/12号

コラム インターネット・マーケティング

by 野田直人

フェアトレードなど、途上国産品の販売を考える時に、ネットショップなどを使い、インターネット上でのマーケティングを行うケースも増えています。ネットショップを利用するハードルは随分低くなりましたが、でもインターネットを使
って途上国産品の売り上げを順調に伸ばしているケースは稀です。今回は、インターネット・マーケティングについて考えてみたいと思います。

先日、JICA中部において当社が受託・実施している「先進国市場を対象とした輸出振興/マーケティング」コースで、1日半ほどにわたり、インターネット・マーケティングの講義と実習を行ってきました。今回は、検索エンジンやSNSを利用したマーケティングのテクニック、WEBサイトの統計の取り方やWEB広告の出し方と言った「ハウツー」の他に、研修員それぞれが想定する商品やサービスの潜在的な顧客を分析し、顧客に合ったインターネット・マーケティングの戦略を考える実習を行いました。

途上国から来た研修員には、それぞれ輸出を考えている商品があります。ですから、「インターネットを使って、この商品をプロモートしたい」という気持ちを強く持っています。

ただ、残念ながら、その気持ちには水を差さなくてはなりません。なぜかと言うと、インターネットでは商品先にありきで、自分が売りたい商品を消費者に勧めようとするプロダクト・アウトのアプローチは難しいからです。

これは、インターネット上で人々がどのように自分が欲しいものを探しているかを考えてみればすぐにわかります。インターネットでは多くの人が検索をかけます。検索に使うのはもちろんキーワードですが、誰も検索しない商品は、見つけてもらうことがそもそもできません。つまりは世の中に存在しないのと同じことになってしまいます。検索経由では、人々が探しているものを売ることしかできないのです。

先日、バングラデシュ在住の知人から、ノクシカタのバッグをいただきました。ノクシカタはベンガル地方に古くから伝わる刺繍のことです。このノクシカタを例にしてみましょう。仮にノクシカタ商品をオンラインショップに並べてみたら、売れるでしょうか?

かなり苦戦すると思います。と言うのは、「ノクシカタ」を探して「ノクシカタ」 で検索をかける人は非常に限られているからです。バングラデシュなどを支援している人は、民族の誇り?でもあるノクシカタをぜひアピールしたい、と考えがちですが、これではプロダクト・アウトそのものになってしまいます。

無論、地域産品であっても、ベネチア・グラスくらい知名度が高くなれば、「ベネチア・グラス」で検索をかけて探す人も大勢出てきますが、ノクシカタではハードルがかなり高いと言わざるを得ません。

インターネットは、時として打ち出の小槌のように働くこともあります。インターネット無しでは届かなかった消費者に手が届くことももちろんあります。しかし、そのためには「消費者が欲しいと思った商品である」という大条件があります。インターネット上に載せておけば自動的に存在を知ってもらえるわけではなく、誰も検索をかけないものは、ないのと同じことなのです。

では視点を変えてみましょう。インターネットで検索をかける時にはキーワードが使用されます。もし、多くの人が使っているキーワードを知ることができたらどうでしょうか。キーワードに合った商品を紹介できたら、購入してもらえる機会はずっと高くなるはずです。これがインターネットを使った、マーケット・インのアプローチになります。

世間一般でどのキーワードがどれくらい使われているかは、Googleに就職でもしない限り把握しようがありません。しかし、自分の管理するホームページへの訪問者のキーワードは、Google AnalyticsとGoogle ウェブマスターツールという二つのサービスを使って把握することができます。

まず、自分のサイトの文の量を増やし、いろいろなキーワードを含むようにします。「ノクシカタ」だけではダメです。それに関連する刺繍とか、ハンドメイドとか、バッグとか。そうやっておいてしばらく観察すると、自分のホームページに来ている人が使っているキーワードの傾向がわかってきます。ノクシカタ以外の、あまり予想していなかったキーワードが使われているかもしれません。

仮に「手作り バッグ」で検索している人が何人かいたのを把握できたとしましょう。そうしたら、ノクシカタでバッグを作り、それを「手作り バッグ ノクシカタ刺繍」のような名前でキーワードを含んだ商品名にしてプロモートすれば良
いのです。この商品が売れるという責任は持てませんが、確率は高くなります。

実はインターネットの世界は確率論の世界です。市場サイズは母集団です。購入確率が一定であれば、母集団(潜在的購入者数、つまり市場サイズ)が大きな商品を投入すれば、購入数は上がります。逆に母集団(市場のサイズ)を一定としたら、購入確率を高める工夫が有効になります。

国際協力の世界では、ついついあらかじめ計画した商品を、計画したとおりにプロモートして売ろうという傾向があります。しかしインターネットでは、統計値をにらみながら、少しずつ商品にもWEBサイトにも手を入れて、売れ筋商品を見つけ出し、あるいは創り出していくものだと考えてください。

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