"/>
人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2009/07/10号

買う力 > 働く力?

by 野田さえ子

十数年ぶりに、インドへいってきました。

前回、訪問したのはカルカッタ。
新卒後、国際協力業界で働こうと張り切っていた、まだ駆け出しのころ。
このときの経験は、苦い記憶として残っています。

その当時、カルカッタの目抜き通りを急ぎ足で仕事先へ向かっていました。

すると、地面から突然大きな影がワーッと近づいてきました。

私はあっと声をあげて、数歩後ずさりしました。
1メートルくらいの大きなタランチュラが自分のほうへ襲いかかってきたような 気がしたのです。

少し冷静になってその影をよくみようと、地面に目を落とすと、恐怖感が一瞬に して、罪悪感に変わりました。

クモだと思っていた影は、実は、足のない男の人でした。

残っている細い二本の腕だけで、体をひきずりながら、私のほうへ死に物狂いで 近づいていたのでした。必死で伸ばしたその細い腕が、コインをちょうだいとい っているのがわかりました。クモと思ってしまったその細い2本の腕と足のない 胴体のその人を目の前に、非常に申し訳ない思いで立ちすくんだことを思い出し ます。

あれから十数年。カルカッタの町も大きく変わったことだと思います。

今回の出張は、カルカッタではなく、世界のITタウンであるバンガロールでした。

町を歩く時間がなかった今回は、子どもたちのお土産を買って帰ろうと、バンガ ロールの美しい空港内でうろうろしてみました。

するとかわいいカメさんのひっぱるおもちゃを発見!

“Tutte Turtle”というかわいい商品名のカメさんは、かめの甲羅にみたてた木 のボールの縞が幾重にも入って、ひっぱるとその模様が奇麗に変化します。思わ ず「かわいい!」と購入することを決めました。

http://mayaorganic.com/products_pages/toy/product_lac.htm

残り二人の男の子たちのお土産にも、その関連の商品の木製のキーホルダーを購 入することにしました。正味、20ドルもしなかったかと思います。

商品ラベルをよくみると“Maya Organic”というカルナタク地区を拠点とする開 発機関の商品です。手造り品で、オーガニックで、バンガロールより60km北部に あるChannapatna地区の木工職人の収入向上支援を謳っています。

この組織は、当初、バンガロール近郊にあるスラム街の収入向上や、児童労働の 撲滅のために活動を始めました。労使折衝といった対立的なアプローチではなく、 働く人たちのスキルの向上のための教育の機会を設けること、また、制度や人へ の単なるアクセス支援ではなく、各ステークホルダーの相互の交流を通したパー トナーシップ構築サポートをするという2点に力をいれています

詳しくは→Maya Organicのホームページへhttp://mayaorganic.com/concept.htm

まずは、“働く”ことではなく、“買う”ことからできる国際協力。 これなら、簡単に始められそうです。

 「どうやったら国際協力に関わる仕事につけるのか」
「何か特別なスキルや学位が必要なのではないか」
「今の仕事を辞め国際協力の世界へ転職することはできるのだろうか」
「社会起業をやってみたいけれどどうやって持続的なビジネスにできるのだろう。」

などなど、“働く”ことを通した国際協力は、越えるべきハードルは多そうです。

特に、最近では国際協力関係の専攻を持つ大学・大学院が、毎年4万2千人の卒業 生を輩出するのだそうです。(国際開発ジャーナル 2008年11月号)。これに対 し、受け皿となる国際協力と呼ばれるセクターで働ける人は、NGO、コンサルティ ング会社、援助関連機関、国連機関など、現職を含めてたったの1万8千人弱だそ うです。

だけれども、“買う”ということを通した国際協力なら誰でも簡単に始められそ うです。

家族構成や、消費行動(浪費家か倹約家か)、滞在地域など人によるとは思いま すが、月に少なくとも1世帯あたり20万円以上はこの“買う”という行為をして お金を使っているとします。年額にすると240万円。国際協力業界で働いている1 万8千人に限っても(業界内での婚姻が多い事実は少し目をつぶり)、年間で使 われるお金は、なんと432億円にもなります。毎年、毎年432億円の予算がつくよ うなものです。

最近では、消費行動以外でも、投資行動に対しても、SRI(社会的責任投資) という選択肢もあります。

まずは、自分の消費行動・投資行動から見直していけそうな気がします。とりあ えず我が家では、ボリビアのフェアトレードのココアを購入することから少しず つ始めています。

私の“買う”力を信じることからはじめよう。

子どもが通園カバンにつけている、インドのお土産の木製のキーホルダーがゆれ るたび、その思いを新たにしています。

追記: 我が家ではコーヒーもかなり消費しますが、フェアトレードコーヒーのおいしい ものを見つけることができません。コーヒー党も納得できる高品質のフェアトレー ドコーヒーがありましたら、ご紹介いただけますか? 社内でも購入検討をした いかと思います。
オススメ品のご連絡先は→info@hitonomori.comへ

  • 買う力 > 働く力?
国際協力事業ホームページ 有限会社人の森