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人の森通信2014/03/28号

コラム「この指とまれ」

by 野田直人

1月中旬から1ヶ月間中米からの研修員の受入れ、1週間あけて次には1ヶ月間南米からの研修員の受け入れと、人の森では今年に入ってずっとあわただしい日が続いていました。

両研修のテーマは「内発的経済開発」。南米研修では人の森がある愛知県一宮市にお邪魔して、商工会議所、民間企業、そしてNPOとそれぞれの立場からの地域振興の取り組みについて、実務を担当する講師の方からお話しを伺いました。

NPOからの講師は、特定非営利活動法人志民連いちのみやの星野博代表。実は当社野田直人の幼なじみでもあります。星野代表によるプロジェクターを使ったプレゼンテーションの冒頭で、いきなり二人の幼稚園時代の写真が映し出されるというサプライズ?もありました。

星野代表のプレゼンの中で、研修員に一番印象に残ったのは「この指とまれ」でした。

星野代表は、当地では知る人ぞ知る「仕掛け人」ですが、そんな彼が言ったのは私の経験の中で、みんなで集まって、みんなで何をやろうと話あっても何も決まらず、何も始まらないことが多かった。私が学んだのは、みんなで何をやるかを話し合うことから始めるのではなく、まずたとえ一人であっても『僕はこれをやる』と決めて自分で始め、『一緒にやりたい人はこの指とまれ』と参加者を募ること。これが何か新しいことをするための秘訣です。」

ということ。

これは私も大いに頷くところがあります。かつて、とある国際協力NGOの会員だった時に「団体としてこんなことをしてみませんか」と提案したことがあります。事務局では「では理事会で話し合いましょう」、理事会では「会員総会で話し合いましょう」、となり、結局会員総会でも何も決まらぬまま立ち消えになってしまいました。

そこで私は、これでは埒が明かないと、一人で始めてしまいました。その後、私は運営から手を引きましたが、1998年に始めたこの取り組みは、現在でも引き継がれて続いています。

日本の多くの有名な地域おこしのケース、例えば徳島県上勝町の彩(いろどり)、三重県伊賀市のもくもくファーム、三重県多気町のまごの店、岐阜県旧明宝村の明宝ケチャップの事例などを見てみても、同じことが言えます。みんなが集まって「何をしようか」と話し合ってから始めたわけではなく、先に勝手に走り始めた人を見て、他の人が指にとまっています。

これはビジネスでも同様でしょう。成功しているビジネスの多くは、「みんなで話し合って決めた」のではなく、強力なリーダーシップを発揮する創業者が素早い決断で作りあげて行ったものです。

地域おこしにしろ、ビジネスにしろ、走り始めれば失敗もあります。ユニクロの柳井社長には「一勝九敗」と題する著書があるくらいです。私自身も、仕掛けたもののうまく行かなかったもの、立ち消えになってしまった企画など、数多くあります。

それでも「みんなで決めよう」よりも、誰かが失敗を恐れず決断・先行することの意義は重々感じています。それを星野代表が「この指とまれ」という、うまい言葉で表現してくれました。

失敗を恐れずまず何かを始めること。失敗したらひっそり退却。芽が出そうになったなら、その時他の人にも機会を分けてあげましょう。

最後に付け加えますと、一般のビジネスとは違って先行者が利益を独占するのではなく、「この指とまれ」と機会を地域内でオープンにしているのが日本の「内発的開発」の一つの特徴であるように思います。

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