人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2009/02/17号

ああ、「商売」とは厳しきものなり

by 野田さえ子

一生懸命働いた後、約束されたその対価が支払われないことが後でわかったとき、みなさんはどのような行動をとりますか?

実は先日、ある取引先の社長さんからお電話を頂きました。

「野田さん、今日お約束したお支払、来月にまわしてもらえないでしょうかね?お恥ずかしい話ですが、税務署の差し押さえが今日入って払えなくなったんです。」

お支払といっても四十数万円程度。私にとっては痛い金額ですが、資本金1億以上、社員も50名以上いるこの会社にとって、いくらこの不景気とはいえ支払いができないとは。

とはいえ、税金の支払いが多少遅れただけで税務署が差し押さえに入ることはないので、よほどの事情があるのでしょう。

さあ、どうしましょう。

こういうときにまったく手立てが思い浮かばないのは、「武士の商い」のせいでしょうか……。国際協力関係の財団法人や、国際機関などにお勤めする身分から一転し、4年前に会社を立ち上げ「あきんど」の世界に飛び込みました。

税金や拠出金・基金からの資金で運営される公的組織の論理にどっぷりつかっていた私が、こうして自分でサービスを作り、売るという民間の論理に飛び込むと、困ってしまうことが多いものです。

さて、どうしましょう。

わが社は、愛知県一宮市にあります。かつて一宮市周辺は繊維産業で栄えました。今は、グローバル化の波におされ衰退しつつあるその町で、服地卸の個人事業主として長年営業し、商売の酸いも甘いも知っている達人の意見を聴くことにしよう、と電話をかけました。

達人いわく。

「来月、全額支払ってもらうという期待をもたず、減額しても確実に払ってもらえる額を今もらうこと」。

「手形を取り扱っていたら、手形を書いてもらうよう、圧力をかけること。来月に手形が落ちなかったら、6カ月以内に2回目の不渡りをだせば銀行取引停止(倒産)の危険があるから、それぐらいの額なら優先してきっと払うだろう。でもおそらく手形は切ってくれないと思うけどね。」

だそうで。

こうして商売人は、大きなリスクに直面しては、様々な手立てを駆使して生活を営んできたんだなぁと、感心しごく。

幸い私は、達人が従事した卸業とは違い、商品の仕入れがありませんから売掛金の額もたいしたものではなく、取引額が億単位ということはありません。今回のことでわが社の経営に大きな影響がでることもありません。

しかし、電話をしてきた社長さんも、その会社の取引先からの支払いがされなくて現在訴訟を起こしているそうです。もし私が大きな債務を伴う別の業種・業態に参入していたならば、取引先の支払いが滞ることで、当然連鎖倒産がおこりえるわけです。商売とは非常にリスクが高く、厳しい世界で、恐ろしくなってしまいます。

資金を投資し富を生みだすという民の論理と、予算をとり配分するという官の論理は、相いれないことが多くあるように思います。

民の世界では、リスクが高く、競争が厳しいため、多くの失敗を確率として想定し、これを許容します。リスクを織り込むためフィーはその分高くなります。これに対し、配分する論理では、計画をし、100%の社会倫理的な成功を求められ、いかにお金を使ったかのアカウンタビリティが求められています。

この二つの論理は相いれず、互いに反発しあいますが、それでも両方が互いの論理を必要とし、学びを得られることも多いと思います。最近の流れである、「民力」を取り入れる公的セクター改革や、社会的責任に着目した企業のCSRなどはこの流れにあると思います。

官から民へ仕事の場を移動させた私は、税金で生計を立てている側ではない側の厳しさを最近、身をもって知りつつあります。

試行錯誤の毎日ですが、それが、途上国で生計を営む庶民の生活の論理を理解する手立てとなっているような気がしてなりません。

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