人の森国際協力>>アーカイブス人の森通信2011/1/31号

本の紹介「What's Mine Is Yours」

by 野田直人

What's Mine Is Yours: The Rise of Collaborative Consumption
http://hitonomori.com/books/0062046454.html

邦訳「シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略」
http://hitonomori.com/books/4140814543.html

私は原書で読んでいますが、理由は単に邦訳よりも少し安いから…。それはとも かく、邦訳の書名だとビジネス書のように思われますが、実際にはそうではなく、 個人がすべてを所有して消費する、という考え方から、所有することをやめる、 あるいは所有しているものを他の人と分け合う、という考え方に変えるという、 意識の変革について書かれた本です。

これはアメリカなどの大量消費社会への警鐘のような意味もあって書かれたと思 われますが、この本を読んで一番に思い出したのは、途上国で出会った多くのエ ピソードでした。

途上国に住み、働いていると、個人のものであろうと、事務所のものであろうと、 現地の人たちに知らない間に何かが持ち出され、使われている、ということがよ くあります。それで腹を立てている日本人も数多くいるはずです。

この問題は、私の開発講座でも取り上げているのですが、途上国の人たちは所有 権を別に尊重していないわけではなく、所有権が他の人に属するものであっても、 所有者が使っていなければ他の人が使っても良い、というルールに基づいて行動 していることが多いからです。

つまり、この本で書いている「シェア」の精神そのものが息づいているわけです。 日本人は途上国へ行くと「持てる人」ですから、一方的にものを使われる立場に なりがちです。でも、逆に日本人が現地の人のものを勝手に使っても、ほとんど の場合、文句は言われません。

「シェア」の仕方を考えて行くと、非常に面白く、例えば上に紹介のある大里綜 合管理株式会社の場合、施設や従業員の勤務時間を地域とシェアしている、と考 えることもできます。

本の中で取り上げられている例の中には、カーシェアリングのように、シェアの 仕組みを作ってそれをビジネスにするものがあります。それも確かに一つの進み 方であるとは思います。

でも私は、「シェア」という行為のもう一つの側面に、ビジネスの上でも注目し たいと思っています。それはシェアを行う人同士の信頼関係の構築です。たとえ インターネットを介したとしても、シェアを行うためには、かかわる人同士の信 頼関係が必須となります。

これをリアルな世界でやっているのが大里綜合管理株式会社ではないでしょうか。 つまり社会と資源をシェアすることにより、会社も周囲の社会も無駄を省き、ま たビジネスパートナーとしての信頼関係も作る。

今、各地で「日替わりシェフレストラン」というものも流行りつつあります。こ れもレストランという場と、各シェフの時間をシェアしようとする試み、と見る こともできます。

一方、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏などは、大金持ちになってからビジネス で得た利益をシェアするために、社会貢献に乗り出しています。それはそれで一 つのやり方だとは思います。

でも、マイクロソフトになりようがない人の森には、もっとささやかでも、常日 頃から社会とのシェアを意識したビジネスのやり方があるのでは。大里綜合管理 株式会社や日替わりシェフの例を見たり、本書を読んだりして、何ができるだろ うかと考えているところです。

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