人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2007/07/07号

コラム 患者にバーコード!?
お客を待たせない大病院のIT経営

by 野田さえ子

 先日、健康診断にでかけてびっくりしました。ここはマクドナルドか、はたまた、自分はスーパーのレジを通る商品かと思ったほど、病院のIT経営の徹底していたのです。しかし、待たされません。20分程度で終了し、会計をすませ、家にたどり着けるという、なんともすばらしいシステムでした。

 この健康診断は、社会保険庁が実施している生活習慣病予防検診制度を利用したもので、勤務先単位で健診の希望を取りまとめ、登録されている健診機関が生活習慣病の検診を行い、個人の負担額を少なくして健康診断が受けられるというもの。

 検診先は、人口40万程度の地方都市にある私立の総合病院です。病棟だけでも、3,4つ点在し、検診を受けるにはいったいどこのビルにいけばよいのか自転車でうろうろしたくらいの大病院で、検診センターは、第一病院の8階にあります。近代的なビルのモダンなエレベーターを使い8階までのぼり、すりガラスの扉を開けると、木目調の壁、洒落たソファがおかれた待合室、病棟のイメージからかけ離れた空間にたどり着きます。人間ドックを受ける専用の着物を着たたくさんの人で溢れかえっており、「あ、これは午前中いっぱい時間がかかるな」と悪い予感がしました。

 ところがIT経営とマクドナルドの店員と見紛うようなスタッフにかかると、たったの20分で済んでしまいました。

 まず特徴的なのは、患者のバーコード管理です。保険証をもって受付にいくと、スタッフがラップトップのコンピュータになにやら打ち込みます。すると、ものの数分で、後ろの事務室から首にぶらさげる名札と、プリントアウトされたカルテがでてきます。「こちらをお下げください」と渡された名札をみると、自分の名前とバーコードが印字されたシールが貼ってあり、カルテには、保険証に記載されてあるデータ、今回の検診内容・項目、予約時刻、診察室番号などがすでに記載。使用するロッカーの部屋番号とロッカー番号もコンピュータですでに割り振られていました。顧客管理が徹底しています。

 スタッフはその割り振られたロッカーへお客を誘導し、「こちらでお着替えください」などの注意点を説明します。でてくると1分ほどで、目の前の診察室へ誘導され、「お名前は○○さんですね」とまずは本人確認。「健康診断ですね」と目的確認。そして検診。

 それが終わると、また椅子に座り待つこと1分。別の係りの人が「○○さんですね、検診ですね。検査はすべて終わりましたか?」と再度確認し、確認されると手持ちのバーコードリーダーに名札を読み込ませ、終了。おそらくIT管理の弱点であるデータと本人との照合をきちんと対話して行なうよう徹底して訓練している様子。

 受付へ戻ると、「会計は630円です」とすぐに会計が終わりました。すばらしい。恐らく、患者の診療予約もコンピュータで時間管理、会計も一元管理しているのに違いありません。

 もう一つ驚いたのは、スタッフの教育・訓練が行き届いていることです。もうここは昔の看護師と患者といった病院くさいところではありません。お客とスタッフといった感じです。スタッフは説明する文言も訓練を受けている様子が感じられ、キョロキョロとあたりを見回す人にはさっとかけより声をかけ、もちろん応対も、「スマイル 0円」のマクドナルドの店員のような笑顔です。すばらしい!

 時間のない私にはとってもありがたい制度。社会保険庁などが管轄する健診など、大量の人々の健診を行なわなければならない場合、こうしたIT経営による健診は受ける側、実施する側にとって多いに負担が減るシステムです。

 もちろん、全ての患者に対しての解決方法ではありません。ITが苦手な層や、日ごろの健康状態などじっくりお話を聞いてもらい診断を受けたい人にとっては、かなり苦痛な制度でしょう。デジタル式の鍵のロッカーを使いこなせず、困っているおばあちゃんを見るとふと思います。個人病院が地元の患者と密なコミュニケーションをとりながら、個別対応の診療を行なう――。これもまた、高いニーズに応える別のビジネスモデルでしょうね。

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