人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2017/04/10-1号

コラム 地域経済をいかに循環させるか

by 野田直人

先日一宮市商工会議所の企画した講演会で、『里山資本主義』で有名な、藻谷浩介さんのお話を伺いました。『里山資本主義』の本も面白かったですが、藻谷さんのお話はさらに明確、かつデータに裏付けられており、説得力もありました。

藻谷さんの演題は、愛知県一宮市の観光開発に関してでしたが、その底流にあるのはもちろん地域振興です。藻谷さんは、日本各地の例を挙げながら、ズバズバと切っていかれます。藻谷さんの最終的な指標は、人口、特に生産年齢人口の動向で、継続的に生産年齢人口にあたる人たちが供給されていれば地域が安定している、という判断をされていました。

この視点で見ていくと、例えば最近地域おこしの成功例として有名になっている熱海や徳島県の上勝町も「不十分」と一刀両断。その理由は、どちらでも、入ってきたお金が地域の中で回っていないから。

熱海の場合は、観光客などが落とすお金の多くが外部に流出し、上勝町の場合は、葉っぱビジネスなどで稼いだお金がお年寄りに貯蓄されてしまって、どちらのケースでも地域内の経済に生かされていない。

さらにトヨタのお膝元豊田市のデータも見せて、生産年齢人口が高いだろうという印象とは裏腹に、高齢化がかなり進んでいることを示されました。豊田市のケースでも、自動車産業の特徴として、原材料などを外部からの調達に頼っており、多額の利益を出しても、多額の外部への支払いが生じており、地域で循環するお金が少ない。

うーん。なるほど。

確かに見かけの利益では、熱海も、上勝も、ましてや豊田なら目を見はるものがあり、経済的に成功していると思われています。ところがそのすべてにおいて、人口ピラミッドはいびつさを増していっているし、このままでは未来はさほど明るくはない。

その解決策として藻谷さんが指摘されたのが、できるかぎり「地消地産」に努めること。これ、地産地消ではありません。地産地消は、地域の生産品を中心に考え、「作ったものをなるべく地元で消費しよう」という考え方ですが、地消地産は、地域での消費を中心に考え、地域で消費されるものはできるだけ地域で供給しよう、というものです。

いわば、従来の地産地消がマーケティングで言えばプロダクトアウト的な発想に基づいているのに対し、地消地産はマーケットイン的な発想だということかと思います。

「地消」を見出してそのニーズに合わせて「地産」を行うことにより、地域の経済がより回り始め、仕事が増える、ということでしょう。

これは実は国際協力の現場でも何度も感じたことがあるテーマでした。

国際協力で地域産品のプロモーションを行うことは多いですが、ほとんどの場合、プロダクトアウト的に生産品を作って「さあどこに売ろう?」というアプローチが取られています。そして、地産地消が口にされることもありますが、これではプロダクトアウトから脱してはいません。

途上国の田舎であっても人が住んでいれば、消費はあります。そして現在においても、外部から流れ込んでくる商品が多く売られています。でも、途上国の田舎の消費者ニーズをつかんで、そこに合った商品を地元から供給しようという発想は、ほとんど耳にしたことがありません。

今度『地域産品ビジネスによるコミュニティ開発』の本を増刷する時には、こうしたアイデアも盛り込まないといけないと考えています。

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