人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2007/10/05号

国際協力の現場で応用できる“経営者”の視点
~和田中学校の教育再生を事例に~

シリーズその2/3
by 野田さえ子

ヒケツその1.コミュニケーションの仕組みを作り出す。そこから人が動き出す。

(1) 理念を言葉にする。語る。そして人が動きだす。

 何を実現するのか、その価値をあえてわかりやすい言葉にします。そして多く語ります。理念が浸透し、それをサポートする人々が動き出します。

 ともかく藤原校長は数多くの理念を簡単で魅力的な言葉に変えていきます。

  • 「一番通いたくなる学校」
  • 「ナナメの関係」
  • 「志立」和田中学校
  • 「土曜寺子屋(通称 ドテラ)」
  • 「学生ボランティア(通称 学ボラ)」

藤原校長によると、日本語で言葉を普及するには、カタカナで3文字程度の省略形が浸透しやすいそうです。

キャッチコピーを工夫することもさることながら、藤原校長はそれらを多くの場で語るのです。スピーチ、出版本、見学者受け入れ、PTA役員会、保護者に対する説明会、ホームページ、マスコミ…。ありとあらゆるチャンネルで藤原校長が語りかけます。

新しい仕組みを導入する際は、PTAの説明会を積極的に開き、昼の部以外にも夜の部を設け、お父さんたちのための説明会も開き、理念、内容、方針など徹底的に語ります。このほかにも、PTAの会議には校長も出席し、1時間くらい理念を話されるそうです。

語る口調も、人に勇気や励ましを与える語り方です。新任の先生が着任された場合、藤原校長は地域本部の方々に必ず自ら紹介します。その際も「この先生はここがすごいんだよ」とかならずほめて紹介するそうです。また、ボランティアのなかで目立たない活動をしている人も、会議の場でその活動を紹介し、その功労を讃えたりするそうです。

人をその気にさせる語り――。非常に参考になります。

私も直接お話する姿を拝見しましたが、なんだかあの強い信念に引き込まれてしまいました。地域本部の学生ボランティアや運営スタッフ、「よのなか」科の講師など、多くの人材が藤原校長のあの魅力に引き寄せられているのは確かです。

(2) フォーマルなコミュニケーション作り。そこから人が動き出す。

「地域の再生から教育再生する」という理念を実現するために、違う組織の人間が情報を共有し、協働できる仕組みを、地域のメンバーを核に意図的に設計しています。

たとえば、学校運営協議会 http://www.wadachu.info/unkyo.html

校長を始め、地域本部の事務局長、町内会長、同窓会会長、小学校PTA会長などを委員として配しています。

自ら「人事のプロ」と自称される藤原校長。地域におけるステークホルダー(利害関係者)を核として、文部科学省や教育委員会などの行政のメンバーを準委員として配置。協力団体には、「よのなか」科の授業の普及を行う企業など、また学校側として主任クラス、副校長を配しています。

この評議会メンバーの構成にはほれぼれするくらいです。この評議会以外にも、毎週金曜日に開かれる主任会議に地域本部の事務局長が参加するなど、日常的にコミュニケーションが図れる仕組みをつくりだしています。

もう一つのコツは、話し合いの議事録を作成し、情報を共有すること。情報の共有化で、信頼関係を作り、問題解決にあたっています。

和田中の場合はホームページにもアップ。外部の人にも公開しており、どのような取り組みをしているのか動きがわかるようになっています。評議会での取り組みの様子を公開することにより、サポーターも増えていくという好循環を作り出しています。

(3) インフォーマルなコミュニケーション作り。そこから人が動き出す。

ずばり、お茶の時間を設けます。

え?なんだ これだけ?という気がしますが、効果は高いです。

例えば、和田中の地域本部は、協議会などのようなフォーマルなコミュニケーション・チャンネル以外にも、お茶の時間などをインフォーマルに情報を交換する場として設けています。例えば地域本部の土曜寺子屋の見学者に対して、お茶やお菓子を提供するサロンを開設。将来の和田中学校の保護者に対して、PTA会長を囲んでお話する場を設けています。

女性など、普段フォーマルな場での発言になれていない人、権威や権力の座から離れている人たちからの大切な言葉が聞ける場となります。

→ 次シリーズにつづく。

~ 野田直人から一言 ~

「お茶の時間」国際協力でも効果があります。実は、私が初めてケニアでJICAのプロジェクトに入った時の上司がマネージメントに長けた人で、やはりお茶の時間をコミュニケーションの場として設定していました。

国際協力の現場では、資金の提供者と受け取る側、技術を指導する者と指導される側、などなど、どうしても一種の序列が作られがちです。それを意識しなくても良い時間・空間を設けることは、コミュニケーションを円滑にする上では非常に効果があります。

以来私もどこへ行ってもお茶の時間を設定しています。

国際協力事業ホームページ 有限会社人の森