人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2007/09/04号

誰の価値観が大事? 研究者の場合
~マーケットの声を聞き研究開発をする意味

by 野田さえ子

自省をこめて申し上げます。

自分の価値観を「常識」として、現実を組み立てがちなタイプに、高学歴の方が多い気がします。その最高峰にいるのが、研究者あるいは学者かもしれません。特に、1つの専門領域で、真面目に研究を積み重ねた方で、プライベートでも自分の地域・専門領域以外の方との活動が少なかった方にこの傾向が強いような気がします。

さてこうした方が、自然環境や社会環境、文化の異なる多様な価値観をもつ人を相手にする地域に専門家として派遣された場合どうなるでしょう。

アフリカに派遣された林業の専門家の場合。幹が太くてまっすぐな樹種の開発に没頭しました。幹を材木利用する日本の林業の常識ではそうかもしれません。しかし、現地の人は、ヤギに食べさせるよう小枝のついた木や、まきなどに使える木を求めていました。さて、この新たに研究開発された木の普及はやりやすいでしょうか?

「普及活動」の達人である私企業では、どのようなアプローチをとっているでしょう?経営の世界では「マーケティング活動」と呼ばれています。

有機野菜などの宅配で有名な、オイシックス(株) 高島宏平 代表取締役社長の場合。

同社の主要顧客は「普通の主婦」です。高島社長は、徹底して主婦に食材の生産者・生産方法などの情報を提供しています。また、栄養学・農学・生態学などの専門家の知見とあわせて、安全と考える基準は何か、何がよい食材なのか徹底して声を聞き、判断してもらい、商品開発をしています。2000年に起業した同社ですが、7年経った現在すでに25万人以上の顧客(会員)がいるそうです。

ここからの学びは――?

ある特定分野で確立された知見をもつ研究者は、いったいどのように国際協力の現場に携わればよいのでしょうか。

先ほどの高島社長も、実は高学歴の持ち主です。東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻修了。「普通の主婦」との価値観を埋めるスキルを磨いたのは、おそらく外資系経営コンサルティング会社のマッキンゼー東京支社に入社し、2000年5月の退社までEコマースグループのコアメンバーの一人として活動していたときではないでしょうか。「顧客満足」という視座を身につけています。

国際協力の分野においても、専門知識を持つ研究者にしかできない領域があります。確立すべきは、現地にいる人々の声を聞くという態度・手法を持つということ。是非、その知見を生かし、現地の人々の価値観に受け入れられる新製品・新サービス・新制度・新概念を生み出すというイノベーションを各地で起こしてもらいたいと思います。

日本からエールをこめて。

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