人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2007/08/07号

誰の価値観が大事? 一生に一度の買い物の場合

by 野田さえ子

 人によるかもしれませんが、一生に一度の大きな買い物といえば、結婚式と新居の購入でしょうか。その一生に一度多額のお金が動く買い物で決定権をもつお方、つまり式場の選択、新居の選択をする権限をもつのは、さてどなたでしょう?

 お金の出所はさておき、ブライダル会社の若き経営者は「8割方女性客が決定権をもつ」と教えてくださいました。マンションにおいても、営業マンの言葉を借りると「奥様が気に入るかが勝負」だそうです。

 1年ほど前、私もその「奥様の権限」を発揮して、マンションを購入しました。とある女性の社長が率いる会社がプロデュースする新築マンションです。「女性の視点で企画したマンション」が売りで販売しています。設計チームに必ず女性が関与しているそうです。「高品質でフル装備住宅で価格が安い」「アフターサービスが充実」というクチコミが奥様ネットワークですでに流れていました。

 入居してやはり「女性の視点」が配慮されているということを感じます。一番驚いたのは、キッチン周りの配慮。特に、キッチン脇にあるベランダへ通じる窓に、ジャバラ型の収納可能な網戸を配置しているところです。料理している最中に、風向きや料理内容によって風通しをよくしたいとき、自由に窓をあけ網戸を広げることができるのです。料理のために一日のうちの長い時間をその空間で過ごすことが多い女性にとって、その時間を気持ちよくすごすことができるようにというこの配慮はすばらしいものです。

 設計や企画に女性が入れなかった時代、たとえば数十年前に設計された公営住宅は、台所が日のあたらない北側に配置されているデザインで、最大のユーザーである女性が寒いところで時間を過ごさなければいけなかった時代から考えると隔世の感がします。

 さてもうひとつの大きな買い物であるブライダル。先日、結婚式場の経営者の方とお話する機会を得ました。その式場は、数年前おしゃれなチャペルを建設し、再度減少している顧客を増やそうと努力されていました。

 女性トイレを覗くと、和式。着飾った服を着ている女性にとってはちょっと困ってしまいます。チャペルは数千万円の投資、さてトイレの改装は1つあたり十万円以下でできてしまいます。結婚式の参列者には甥や姪などの子連れ客も多いのですが、子連れ客に必要なオムツ替えのスペースがトイレにはなく、授乳室にのみ配置。

 これじゃ、授乳中のお客さんの横でオムツを替えなければいけないことに。子連れのお客さんがいったいどうしているのかわかりませんでした。これも数万円の投資でオムツ替えスペースは設置できるはず。

 経営者とお話をすると、商品開発に女性がかかわることもなく、典型的に「マッチョ」な会社の組織文化でした。今後もブライダル部門を注力していきたいという経営者。「あなたのお客様は女性なんですよ」といいたくなってしまいました。

 さてここで「Whose reality counts?」。「誰の価値観が大事」なのでしょう?経営者の価値観とお客様の価値観は違います。お客様の価値観を共有する人材を起用し、あるいはニーズを調査し商品開発する――。これも経営者の腕のみせどころでしょうね。

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