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人の森通信2013/10/23号

コラム「国際協力の現場でもカイゼンを進めよう」

by野田直人

現在マダガスカルのプロジェクトでは、当社の研修などで何度か紹介しているPRRIEに基づいたアプローチを使って、地域住民に対して働きかけを行っています。実際にPRRIEに基づくアプローチが機能するかを確認し、マダガスカルの現状で用いるためにカスタマイズすることがプロジェクトの大きなテーマです。

ところが、現状のプロジェクトはアプローチ云々ではないところの問題に直面していることが明らかになって来ました。

その一つがプロジェクトの中での「カイゼン」意識の欠如です。カタカナで書くカイゼン」は、ご存知の方も多いかと思いますが、日本の企業が作業効率アップや無駄を減らすことを目的に行うものです。

以前読んだ企業経営者向けの雑誌の「カイゼン」の例として、とある工場内で、 生産ラインの配置を50センチとか1メートル動かすだけで、年間にしてみると膨 大な作業コスト、要は無駄に使われている労働者の時間が減る、という指摘があ り、感心すると同時に「ここまでやるのか」と思ったものでした。

一方でプロジェクトの対象地域はマダガスカルの広い田舎。大勢の労働者が勤務 時間を守って働いている工場ではなく、時間の流れが停まったような牧歌的な田舎です。ですから数10センチ単位で考える日本の工場での「カイゼン」は、ある意味他人事のように思っていました。

ところが、です。

マダガスカルのプロジェクトには、エリア・マネージャーと呼ばれる普及の担当者が現在6人います。そしてエリア・マネージャーは、一人当たり平均5村くらいを担当しています。各村には村人から選んだ指導員が配置されており、この村の指導員を統括するのがエリア・マネージャーの主な役割です。

ある地域の村々でどのエリア・マネージャーが担当しているかを確認したところ、 「この村はAさん、こちらもAさん。そしてこの奥の村はBさん…」

「ちょちょちょちょっと待て!なぜAさんが担当している村々のさらに奥の一つ だけBさんが担当しているの?Bさん担当の他の村は他の地域じゃないか?」

エリア・マネージャーが移動に使うバイクの免許の取得状況とか、各村での作業 開始時期のずれとかがあったため、意図せずBさんが飛び地のような村を担当することになっていたようです。

私は普及のアプローチや、林業分野での研修における技術のアドバイスが担当で、年に数ヶ月程度しかマダガスカルに滞在しません。そして、エリア・マネージャーの雇用や配置には直接かかわっていなかったので、今まで気がつかずにいました。

しかし、この状況では、Bさんは自分の他の担当村を回るついでにこの村も訪問する、というようなことは距離があって容易にはできません。一方隣の村まで来ているAさんは、すぐ近くまで来ているのに、自分の担当ではないこの村へ行きません。

一つだけ遠い村を担当することはエリア・マネージャーの時間の無駄であり、バイクの燃料の無駄であり、隣村とは異なった担当者がいることで、各村に配置されている指導員の間のコミュニケーションの上でも非効率性が生じている可能性が大です。

結局わかったことは、プロジェクト内で、「エリア・マネージャーが巡回する効率性が、担当する村を決める要素として勘案されていなかった」という事実でした。つまり「カイゼン」の意識を持ってプロジェクトの運営にあたっている人がいなかった。

プロジェクトが採用するアプローチの選択に比べたら、担当村の選び方は大きなイシューではないかもしれません。しかし、このような無駄をプロジェクトの期間である3年間とか、5年間とか放置したら、一体その分の人件費や余分にかかる燃料代はいくらになるでしょうか。

プロジェクトの予算は有限ですから、どこかで生じた無駄はどこかへしわ寄せが行くことになります。ところが「予算」と称して、うっかり無駄まで計上してしまっているのが現状のような気がします。予算どおり使われていると、そこに無駄が入りこんでいることに気がつきません。何しろ「計画通り」ですから。

この無駄を削って、もっと有効な部分に使えたら?マダガスカルのプロジェクトではPRRIEの方法論に基づいて地域住民に提供する研修を行っています。もっと多くの研修を住民に提供できたら?当然、住民の生産性や生活が改善する可能性は高くなります。

「カイゼン」は、民間企業が工場などで行うものだと思い込まず、国際協力の現場でも「カイゼン」意識を高めていく必要がありそうです。

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