人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2010/09/16号

「一村一品ブランド」のリスク

by 野田直人

人の森通信 10/04/26号で、野田さえ子が一村一品(OVOP)ブランドを作ることが、ブランド戦略や持続性から考えてあまり意味がないことを指摘しました。 (バックナンバー http://hitonomori.com/archives/10042601.html

今回は、また別の視点で「一村一品ブランド」のリスクを考えたいと思います。なぜこのような問題提起を行うかと言いますと、JICAの調査団報告などを見ると、よく「一村一品ブランドの確立が必要」といった報告がなされているからです。これはかなり危険な提案と言わざるを得ません。

ブランドというのは商品の持つ品質や、イメージを代表するものです。企業は自社のブランドを確立するため、そして守るために努力をしています。

途上国での一村一品支援において重要なのは、この「ブランドイメージを守る」という点です。

一方、調査団報告や活動計画の中でうたわれるのは「ブランドイメージを作る」に限られています。

つまり、相手国政府や日本のプロジェクトが支援して、一村一品をブランド化する、いわば、一村一品の冠が品質保証をするようなイメージでしょうか。

政府や日本のプロジェクトがかかわっている間は品質保証はある程度可能でしょう。しかし、その後を考えてみてください。

一村一品は広がらなくては意味がありませんし、途上国での一村一品の導入は、日本が地方自治体・コミュニティ主導であったのに対し、中央政府主導で全国レベルで展開されるケースがほとんどのようです。

つまり、一村一品の名の元での生産者や商品は増える。では、クオリティ・コントロールを行う管理体制は?

一村一品の冠を付けた商品が今後もずっと政府機関や日本のプロジェクトを通じて流通する、などということはあり得ませんし、それでは持続性もありませんから、それぞれが独自に流通して行くことが望まれます。

その時に、途上国、特にアフリカの田舎のような環境で、生産が拡大し独自に商品が流通し始めた場合、質の管理はどうなるでしょう。政府や日本のプロジェクトが強く関与している時と同じレベルで継続できるでしょうか?

日本の有名企業ですら、時には不正・不法な行為を行い、ブランドイメージに傷を付け、場合によっては企業が消滅することすらあります。

その場合に評判を落とすのは特定の企業ブランド、消え去るのも特定の生産者のみが使用しているブランドです。

では、一村一品の冠を付けた商品の一生産者が将来、意図的かどうかにはかかわ らずブランド・イメージを傷つけるような行為を行ったらどうなるでしょうか?

この場合、「一村一品ブランド」を付けた商品すべてが影響を受けかねません。

一村一品運動を導入しようとする途上国政府や日本のプロジェクトは、当初はある程度品質管理にコミットできても、それを永続的に実施することはまずできません。つまり、一村一品を途上国でブランド化しようということは、将来的には実効性を持った管理者が不在となるブランドを作ることに他なりません。

途上国の田舎では、一村一品として食料品を生産するケースが多々あります。本来これはもっとも厳しい品質管理を求められる分野の一つです。多数のそれぞれが独立した生産者を一つのブランド下にまとめることはブランドとしてのリスクを高めることになることでしょう。

本来品質保証は、各国が認証制度や基準を作り、実施すれば良いこと。日本の一村一品運動のアイデアを活かす、ということの意味は、ブランドを作って商品を売ることではなく、もっと別のところにあるのではないでしょうか?

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