人の森国際協力>>アーカイブス>人の森通信2009/05/28号

「開発協力における成功の基準」を読んで

by 鶴田浩史

いつも人の森通信には考えさせられています。

野田さんがメッセージに出す「新たなことへのチャレンジ」「工夫」に関して、最近、Disruptive technologies=破壊的技術という言葉を知りました。「予期していなかったような仕方で製品やサービスを改良する技術革新」のことです。

Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/ディスラプティブ技術

5月10日発売のハーバードビジネスレビュー6月号にも記事がありました。この記事の中では、破壊技術に破れていく優良企業の姿を分析しています。

その中では、破れていく理由は「(大量・既存)顧客の意 見に耳を傾ける」という『ドグマを妄信的に信奉していること』があるとし、議論を開始しています。優良企業の「既存顧客のニーズを基に、合理的かつ分析的な意思決定をしていくというプロセス」の中では、重要とは思われない、よくわからない市場や顧客に対するアプローチは正当化されることがない、と。既存の大口顧客のニーズに合致しない技術は受け入れられない、と。

この記事を読んでいて、この優良企業のようなことが、国際協力についても言えるのではないか、と思いました。「住民の声に耳を傾けよう」という教義は広く流布されていますし、その声をもとに論理的っぽく分析していくPCMがあったりしますし、そもそも、各ドナーや支援者、上司、等への説明責任を求められる中で、「大量の既存顧客のニーズから論理的・分析的なプロセスをへなければならない」という制約がいやおうなしに存在しているとも考えます。その結果、国際協力の分野の破壊的技術は生まれにくい。

ちなみに、記事の中では、破壊的技術の特徴として二つあげていますが、そのひとつとして、「このような技術変化故に製品性能が異なり、少なくとも当初は、既存顧客がこの性能の違いに価値を認めないこと」を挙げています。国際協力のように異なる背景のステークホルダーがたくさんいる状況で、破壊的技術の導入にあたり、広く納得してもらうことは難しそうです。

国際協力・分野で、「説明責任が求められることが多い」ということが、また、そういった風土から浸透してしまった上記の優良企業的な意思決定プロセスが、「新たなことへのチャレンジ」「工夫」の足をひっぱっているように思います。

でも、突破口はありそうです。「破壊的技術を見極め育てる」のか?記事の中で、ヒントが書かれています。将来的に、この破壊的技術の育て方や思考のプロセスがより明確になって、扱いやすいものとなった時、国際協力の分野でも「新たなことへのチャレンジ」「工夫」がたくさん生まれるようになるのではないでしょうか。

国際協力事業ホームページ 有限会社人の森